肉・魚・豆・タマゴのタンパク質は、胃酸でペプチドに寸断され、十二指腸に送られてトリペプチド(3個結合のアミノ酸)になり、続いてジペプチド(2個結合のアミノ酸)に分解され、最後に小腸で1個単体の遊離アミノ酸になる。
これらは、亜鉛やタンニン酸と結合して腸粘液を生成したり、微絨毛の表面で亜鉛が介在した終末消化酵素となって有用な栄養成分を捕まえ、微絨毛内部へと取り込む活動をすることになる。これら消化酵素の働きで栄養成分が身体に吸収されるが、問題は、肉や魚のアミノ酸から遊離アミノ酸になるまでに長時間かかるということである。
エンドルフィンという注目の物質も、これらの酵素が介在して小腸で生成され、脳下垂体に貯蔵される。そして苦痛やストレスを感知すると分泌される神経伝達物質となり、その働きから「脳内麻薬」と呼ばれてモルヒネ(鎮痛物質)の6~7倍の鎮痛作用があると言われている。
その1つ、β-エンドルフィンは鎮痛・鎮静・免疫効果の高さで知られ、免疫細胞の防御反応を強化する作用もある。アミノ酸成分のアスパラギン酸やグルタミン酸を原料として31個のアミノ酸成分を繋げて生成され、脳が痛みなどのストレスを感じると、細胞に付随するオピオイド受容体(モルヒネが結合すると鎮痛作用を発揮する)に接触することによって、痛みやストレスから解放されるという仕組みである。
エンドルフィンは癌細胞を消滅させる免疫システムにも大きく関与する。体内に侵入する異物や体内に発生する癌細胞を攻撃するキラー細胞や貪食細胞(癌細胞を食べる)には、エンドルフィンを繋ぎとめる受容体(電気のプラグとコンセントのようなもの)を持っているため、エンドルフィンが分泌されることによって、これら免疫細胞が一気に活性化して集合し、癌細胞を消滅させてしまうという。
エンドルフィンの生成については前述の通りだが、癌罹患者の場合は医師からタンパク質摂取の制限を受けたり、投薬の影響で腸内細菌が減少したりで、終末消化酵素(腸内フローラで栄養成分を分別して吸収する)が機能していないため、アミノ酸の消化吸収が悪化している。したがって、31個のアミノ酸連結が不十分になってエンドルフィン生成が困難になってしまう。これが原因で、癌罹患者は免疫機能が低下するといわれる。
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